事業を始めると、年に1回、確定申告をする必要があります。その時に、一年間の売り上げや経費の集計を行った決算書を作らなければなりません。決算書を作るには、最低限の会計の知識は必要なのですが、事業主さんにも、最低限どういった内容か理解をしておくべきモノになります。
事業主は、なぜ勘定科目を理解しないといけないの?
なぜ勘定科目を理解する必要があるのでしょうか。それは、経営者自身が事業の状況を正確に把握するためです。 事業の状況は、通帳の残高からざっくりと儲かっているか赤字なのかはわかると思います。しかし実際に経営をしていくと、どんぶり勘定では行き詰まりを感じることが増えてきます。例えば車を買ったり、仕入れ代金の支払いが先に必要であったりすると、通帳の残高は大きく減りますし、納品の前入金があったり着手金を受け取ったりすると残高が大きく増えることになります。様々な要因で通帳の残高は増減するのですが、実際の損益とは違ったタイミングで動くことになります。
そのため実際にいくら儲かっているのかを、簿記を通じて把握することが大切です。
また、材料費が上がったり、 ガソリン代軽油代が高止まりしたり、様々な要因で利益率は変わっていきます。思っていたよりも利益率が低くなることはよくありますので、その原因を正しく把握して対策を打てるようにしましょう。
自分も他人も理解できる決算書を作りましょう
会社の状況は事業主が一番よく分かっていると思います。ただし、例えば借り入れを行うときは銀行にこれを説明する場面があります。具体的にいくらの売り上げがあって、どのくらいの支払いがあって、利益はいくら残っているのか、これを自分も他人もわかるように数字という共通のものさしで表現したのが決算書です。年に1回の確定申告の際にも、正しい決算書を準備することが必要です。そのため、自分もわかりやすく、他人にも説明しやすい確定申告書、決算書を作っていきましょう。
勘定科目を決めるコツを勘定科目の分類一覧表
それでは決算書の作成に使う勘定科目を決める時に、コツはあるのでしょうか? 一番のポイントは最小限の分類にまとめる事です。細かく分けすぎると、使わなくなってしまいます。 税務署から送られてくる決算書にもともと印字されている勘定科目について、上から順にご説明いたします。
科目 | 内容 | |
売上 | 商品や製品の売上やサービスを提供したその金額 | |
家事消費 | 商品などをプライベートで使用した場合の買入れ金額 | |
給料賃金 | 従業員などに対して支払う給料
(身内への専従者給与は除く) |
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外注工賃 | 外部に注文して支払ったか工賃など | |
減価償却費 | 建物、機械、車両、器具備品などの償却費 | |
貸倒金 | 相手先が倒産した際などの売掛金や貸付金等の回収不能額 | |
地代家賃 | 事務所、店舗などを借りている場合の代金 | |
利子割引料 | 借入を行った場合の利息 | |
租税公課 | 事業税、固定資産税、印紙税、自動車税など、必要経費になる税金の支払い | |
荷造運賃 | 販売商品の包装や発送にかかった費用 | |
水道光熱費 | 事務所や店舗の水道代、ガス代、電気代など | |
旅費交通費 | 出張や商談取引のためにかかった交通費。電車、タクシー、駐車場代、ホテル代など | |
通信費 | 電話代、切手代、郵送代、インターネット、通信のためにかかった費用 | |
広告宣伝費 | 看板、広告代、パンフレットなど店や商品を宣伝するための費用 | |
接待交際費 | 取引相手との商売上の接待や交際にかかった飲食代、土産代など | |
損害保険料 | 事務所などの火災保険料、自動車保険料など | |
修繕費 | 車の修理など固定資産の修繕やお手入れにかかった費用など | |
消耗品費 | 何度か使用するとなくなってしまう消耗品など。 (10万円未満で1年未満の使用期間のもの) |
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福利厚生費 | 常備薬や飲料品、制服など従業員がより働きやすくなるための費用 | |
雑費 | 他の科目に分類されない少額のもの |
元々決算書に記載されている上図の他に、追加した方が分かりやすいものもいくつかあります。
法定福利費 | 健康保険料や厚生年金、労働保険料など、従業員への社会保険料 | |
事務用品費 | 消耗品のうち、筆記用具や伝票、紙やインクトナー類など |
勘定科目を使う際のポイントですが、毎年違う科目を使うのではなく毎年できるだけ同じ勘定科目を使用するようにしましょう。そうすることで、前の年や前々年との比較もできるようになってきます。
ここまで、経費の分類についてご説明しました。
それでは経費にならない入出金についてはどのように分類すれば良いのでしょうか。
経費にならない入出金についての勘定科目を理解しましょう
個人で事業を行っている場合、プライベートのお金と事業で使うお金は別の通帳を使うなど、きっちり分けなければなりません。しかしどうしても混ざってしまうことがありますし、事業で稼いだお金のうち一定額を生活のために家計に入れる必要が出てきます。そういった際にはどのような取り扱いをすれば良いのでしょうか?
①事業主貸、②事業主借、③家事消費の使い方
事業用のお金を家計に動かした場合、①事業主貸という勘定科目を使用します。同じように、事業用の通帳から個人が負担すべき物の購入を行った場合の代金も①事業主貸として計上していきます。
反対に、家計から事業用の通帳にお金を動かした場合などは②事業主借という勘定科目を使用します。個人で購入した物を事業で使う場合も、適正な金額を②事業主借として金額計上していきます。
③家事消費という勘定科目は、販売用に購入した商品などを自分のプライベートで使用するときに使います。例えばレストランなどで残った食材を自宅に持って帰る場合などは、この③家事消費という勘定科目をつかって買取をしたような会計処理を行います。ちなみに、家事消費をした際の購入金額は、原則的に「販売金額」、もしくは「通常のお客様に販売した代金の70%か仕入金額どちらか多い方の金額」とすることもできます。
事業を開始する時の元手のお金は④元入金という勘定科目を使用します
仕事を開始するためにかかった様々な物の購入などは、開業資金を使って支払います。 その開業資金は、④元入金という勘定科目で計上します。会社で言う資本金と同じような位置づけです。
ただし会社と違うのは、毎年この元入金の金額が変わるということです。翌年の元入金は前年までの利益が積み上がったものを毎年差し入れるという計算式で算出されます。
翌年1月1日の元入金の計算方法
【今年の元入金+今年の青色申告控除前の事業所得+事業主借ー事業主貸】
まとめ
ここまで勘定科目の分類方法や使い方についての注意点をご説明してきました。決算書はこれらを集計することで出来上がるのですが、会計に対して苦手意識を持つことなく本業の現状を正しく理解するために是非とも勘定科目の分類は頭の片隅に入れておいてください。