書籍:20歳の自分に受けさせたい文章講義

こんにちは、株式会社PROSの池尻と申します。

今日は先日読んだ書籍「20歳の自分に受けさせたい文章講義」の内容がとても良かったので、文章の書き方について考えながら要約してみようと思います。ブログなどを書かれる方はとても参考になります。言葉足りずのところも多々ありますので、ぜひ書籍を御購入されて読まれてください。

 

この書籍は、「書く技術は一生使える武器になる」というコピーから始まります。

内容は五つのまとまりで展開します。

 

  1. 気持ちを「翻訳」する
  2. 文章は「リズム」で決まる
  3. 構成は「眼」で考える
  4. 読者の「椅子」に座る
  5. 原稿に「ハサミ」を入れる

 

文章を書くプロセスは思考を深めることにつながります。

 

それでは内容に入っていきましょう。

 

そもそも文章とは何なのか

筆者はまず、あなたは文章を書くことに、どのような悩みを抱えていらっしゃいますか?と問います。

私たちが文章を書く上でぶつかる問題はほとんどが次の2点に集約されます。

  1. 文章を書こうとすると固まってしまう
     →書き始める手前で手が止まる
  2. 自分の気持ちをうまく文章にすることができない
     →なんとか書き始めたけど、うまく書けない

ここで一つ考えていただきたいのですが、書きたいことは頭の中にあるのに書くことはハードルが高いのはなぜでしょうか?。書きたい内容を話すことはできるのに書けない、その理由は何でしょうか?

文章が書けない理由:答えは簡単です、書こうとするから書けないのです。

頭の中の「ぐるぐる」を、 伝わる言葉に”翻訳”すればよいのです。 

先ほどの1番で悩んでいる人は、まだ頭の中の「ぐるぐる」を整理できていないのです。2番で悩んでいる人は「ぐるぐる」を”誤訳”してしまっているのです。 

例えば、小学校の頃に書かされたような読書感想文を書くときに「夏目漱石の『坊ちゃん』を読みました。とっても面白かったです」では、どの部分がどのように面白かったのかを伝えることはできません。感想文を書こうと思うなら、 物語の内容、魅力、ポイント、欠点など、あらゆることを自分の頭で整理・再構築し、アウトプットしていかなければならないのです。

つまり文章を書くことは、頭の中を整理し言葉を与えることに通じます。

筆者は聞いた話を”自分の言葉”で誰かに話す方法を推奨します。これが翻訳の第一歩になるとのこと。その時に次の三つのポイントを意識してチャレンジしてほしいのです。

  1. 再構築:言葉にするプロセスで話の内容を再構築する
    相手との長い時間の会話の中で出てきた単語やテーマが頭の中にバラバラに散らばった状態から再構築し、理解を深めていくのです。
  2. 再発見:語り手の真意を「こういうことだったのか!」と再発見する
    相手の話を聞きながら100%内容を理解することは基本的に不可能です。だからこそ自分の言葉に翻訳する過程で「あーなるほど。あの人の言っていることはこういうことだったんだ!」と突然理解できることがあります。
  3. 再認識:自分がどこに反応し、何を面白いと思ったのか再認識する
    誰かから聞いた話を別の人に伝える時、そこには必ず「私」というフィルターが入ります。 我々は翻訳する時、自分が対象のどこにピントを合わせているのかを知ることになるのです。

翻訳する力を高めるトレーニング :地図・絵・写真を言葉にしてみる。

例えば最寄り駅から自宅までの道のりを、まったく土地勘がない人にもわかるように言葉で説明するのです。ここで重要なのは、「自分の意見をいっさい入れないこと」です。より詳しく説明しようとして安易なレトリック(美辞麗句のようなもの)に走るほど、正確な描写から離れてしまうのです。

 

リズム:読みやすい文章に不可欠なリズムとは

筆者はまず文章のスタイル、文体を考えるべきだと言います。文体とは、①語尾の「です・ます調」と「だ・である調」の使い分けと②主語「私」「ぼく」「俺」の使い分けに代表される、文章のリズムを決める要素のことです。

良い文章とはスムーズに読みやすい文章のことであり、スムーズに読めるということは適切なリズム感があるということです。では、この文章のリズムは何によって決まるのでしょうか?

文章のリズムを決めるのは「論理展開」

筆者は、リズムの良くない文章というのはスムーズに読めない文章のことだと言います。ただし、1文1文が日本語の文法がおかしいことは少ないのに、スムーズに読める文章とスムーズに読めない文章が存在するのはなぜでしょうか。

それは、文そのものがおかしいのではなく、文と文の「つなげ方」や「展開の仕方」がおかしい時、その主張は支離滅裂になり、リズムよく読めなくなるのです。

 

論理展開の破綻に気付く方法

筆者は接続詞をたくさん使う事を推奨します。「そして」「しかし」「だから」などの接続詞を使うことで、文章の流れる方向が決まります。文章の流れる方向が決まると、論理構成ができ上がっていきます。

そのうえで、一文の中で句読点の打ち方、改行のタイミング、漢字とひらがなのバランスを整えていくのです。「句読点は1行に一つ」「5行に一度改行する」「漢字の割合を半分以下に減らす」ことで、文章を見たときの圧迫感が大きく軽減されます。圧迫感があると、文章を読む前に眼をそむけたくなってしまいます。視覚的なリズムを大切にしてください。

聴覚的なリズムは音読で確認する

筆者は文章を書き終えて最終的な確認は、文章を耳で聴いた時のリズムで行うことを推奨します。自分の文章を音読する際に次の2つのポイントを気にかけてください。①読点「、」の位置を確認することと、②言葉の重複を確認することです。 実際に音読をしてみると、頭の中で想定していた「こう読むに違いない」というリズムと、耳から入ってくる音のリズムに大きなギャップを感じることがあります。自分が意図する箇所に「継ぎ目」としての読点が入っているか、音読によってチェックしよう。同じ接続詞は近すぎる場所に出てくるのもリズムを壊します。全体の文章量にもよりますが、一度使った接続詞は3段落くらい間を置きたいですね。「~~である」「~~である」も続けず、「~~だ」「~~となる」などの変化を付けましょう。

文章のリズムを確認するツールとして、音読を活用してください。

断定を上手に使う

ズバッと言い切ると、文章に強いリズムが出来てきます。モゴモゴと歯切れの悪い言い方に終始している文章はどうやってもリズムが乗りません。

しかし断定の言葉は、その切れ味の鋭さゆえ大きなリスクがあります。断定するからには、いつも以上に論理の正確性が求められます。断定の前後2~3行でに完全な論理展開をしてください。

断定するには相当な自信が必要だと思われるかもしれませんが、筆者の考えは違います。自信があるから断定するのではなく、自信を持つために断定するというアプローチを推奨しています。 

構成:文章はどう構成すればよいのか

筆者は文章の構成を考えるときに、映画やテレビドラマの映像表現を参考にする手法を継承しています。再現ドラマなどで使われる表現方法は、四コマ漫画のような起承転結や論文のような「序論・本論・結論」方式よりも、「分かりやすさ」「伝わりやすさ」を優先した表現方法になります。

映像表現に学ぶ文章の構成

映像表現での基本構成は次の3つの流れとカメラワークに支えられます。

  1. 導入:客観的なカメラワーク(遠景)
  2. 本編:主観的なカメラワーク(近景)
  3. 結論:客観的なカメラワーク(遠景)

つまり、次のような流れになります。

導入部分は客観的な状況説明を行う一般的な内容ではじめます。これから本編で何を語るのか、なぜそれを語る必要があるのか、世の中の動きはどうなっているのかなど、バックグラウンドを説明していきます。

続く本編の内容では、自分の意見や仮説を展開します。具体例や事例を交えることで自説を補強しながら主観を展開していきます。

そして結論では、再び客観的な視点に戻り自論をまとめていきます。 本編で展開した自らの意見を「風景の一部=動かしがたい事実」として描くのです。

導入は映画の予告編のつもりで 

読者はいつでも「読まない」という最強のカードをもって文章と対峙しています。大切なのは、まず”椅子”に座って読んでもらうことです。

そのため文章の導入部分は映画の予告編のように惹きつける内容にしていきましょう。

  1. インパクト優先型
    読者が「おっ!」と興味を引くような結論を持ってきて、そこからカメラをロングショットに切り替える。意外な結論を最初に述べて、関心の導線として使うのです。
  2. 寸止め型
    ホラー映画の予告編のように、舞台説明を行い登場人物を軽く紹介、そこに忍び寄る何者かの影を映しつつも事件の瞬間を見せることなく、暗転し叫び声だけを聞かせる。核心部分は観客に想像させるような手法です。もう少しで正体をつきとめられる、というギリギリのところまで情報を開示するのです。
  3. Q&A型
    読者の質問とそれに答える内容を、冒頭にまとめます。その後につづく本編で、答えた内容を補強していくのです。面白みは少ないが、一番手堅い導入と言えるかもしれません。

論理展開のマトリョーシカ人形

論理展開とはすなわち「論が理にかなっている」ということです。自らの主張が確かな理由によって裏打ちされた時、その文章は「論理的」だと言えるのです。この時にイメージするのが、ロシア民芸のマトリョーシカ人形です。

  1. 大マトリョーシカ:主張=その文章を通じて伝えたい主張(主観)
  2. 中マトリョーシカ:理由=主張を訴える理由(客観)
  3. 小マトリョーシカ:事実=理由を補強する客観的事実(客観)

全ての文章には主張が必要です。文章を書くからには何かしら伝えたいことがあるはずです。文章を読むとき、読者は必ず「この人は何が言いたいのだろう?」と考えながら読みます。そのため、文章を書くとき、我々は「結局何が言いたいんだ?」という問いに”ひと言”で答えられなければならない。文章を書くということは、他人を動かそうとする”力の行使”なのです。

この主張を裏付けるために、なぜそう思ったのかの理由と理由を裏付ける事実をまとめていきます。 この事実については、面倒くさい細部を丁寧に描くと言う作業が必要です。”面倒くさい細部”の描写によって得られたリアリティは、読者の理解を促し、文章の説得力を強化します。

この事実の描写は、細部になればなるほど手を抜けません。フィクションの世界で語られる「大きなウソは許されるが、小さなウソは許されない」という言葉があります。自分が望んでいなくても小さなウソや間違いが出てしまうことがあります。これは文章を書くための「理解が足りない」ことが原因です。文章には”自分の頭でわかったこと”以外は書いてはいけないのです。読者にゴール地点を見せることが目的ではなく「ゴールまでの道のり」も示すことが文章の役割なのです。 

構成の”絵コンテ”を作る

文章の構成を考えるとき、ただ頭の中で素材をこねくり回しても絶対にうまくまとまらない。頭の中でうごめいている「ぐるぐる」は、可視化することでようやく客観視できるのです。書く内容の構成をマインドマップやツリー構造、付箋や箇条書き図解などで表していくのです。

特に筆者は、図解する方法を推奨しています。プログラムのフローチャートのように図解することで、「流れ」と「つながり」が明確になるのです。流れが明確になると、接続詞を間違えないようになります。

文章量を”眼”で数える

1段落の文字数を直感的に判断できるようになることです。

序論・本論・結論の構成で展開する場合、「序論2:本論6:結論2」程度の割合が無難です。例えば全体で3000字のブログを書くとき、「序論600字:本論1800字:結論600字」になります。この600字を、頭で数えるのではなく”眼”で数える習慣を作りましょう。

ワープロソフトだと1行当り40字、これを15行で序論の600字になります。そしてこの15行を5行の段落3つで構成するとしたら、見出しに何をつけるのか考えるのです。

見出しを考えるときは、先の図解法でやってみましょう。

日によって書く文章の文字量を大きく変えるよりも、毎回同程度の文量で書いた方が構成力は早く身につきます。

読者:読者をひきつけるために、読者の”椅子”に座るとは

皆さんはちゃんと「お客さんの椅子」に座って、自分のビジネスを試しているでしょうか?例えばあなたがレストランのオーナーだとして新メニューは何度となく試食を重ねるはずですが、その料理を食べる椅子やテーブルをしっかりと試しているかどうかです。

(実際には3軒に1軒ぐらいの割合で、椅子やテーブルがぐらついている店があります)

文章を書くときに「読者」をイメージして文章を書いているかどうか。読者をイメージするだけではなく、読者の椅子に座っているかどうかです。

「10年前の自分に語りかける」「特定の”あの人”」に語りかける。こうして書かれた文章は、言葉の強度がまるで違います。なぜあなたが10年前の自分に向けて書くべきなのか?それは、いま、この瞬間にも日本のどこかに「10年前のあなた」がいるからです。年齢層や好みなどで細分化するのではなく、たった一人の”あの人”に向けて文章を書くのです。

多くのライターや編集者が陥ってしまう「多数派の罠」にはまらず、特定の誰か一人に向けた文章を書きましょう。

「わかるヤツにだけわかればいい」では誰も読まない

専門性に溺れると、文章がどんどん雑になります。書き手の理解が深ければ深いほど、わかりやすい表現でどんな高度な内容も語れるはずです。「こんな文章でうちのオカンは理解してくれるかな?」と自問自答するのです。

生理的に嫌いな文章に注目しましょう。文章の好き嫌いをはっきりさせることで、”書き手としての自分”が見えてきます。自分がどんな文章を書きたいと思っているのか、その傾向が明らかになります。「上から目線」「こびへつらっている」「意見をぼかしている」「決めつけが多い」「回りくどい」など、自分がどこに嫌悪感を抱いているのか、なぜ嫌いなのかを考えましょう。 

 

“説得”せずに“納得”させる

どれだけ「集中して書いたもの」も、そのまま「集中して読んでもらえる」わけはありません。しかし、 いかなる読み落としや誤読も、最終的には書き手の責任です。そして、人は「他人ごと」では動きません。われわれは「正しい」だけでは動けません。頭で「正しい意見だ」と理解できても、肝心の”心”が動かなければ行動にはつながりません。

主張のどこかに「これは他人ごとじゃない!」と思わせる要素が含まれていないと、我々の心は動きません。他人事を自分事に変換し、当事者意識を芽生えさせなければならないのです。

読者は議論のテーブルに乗せる方法は、「仮説検証を一緒に行う」「起承転結の”転”を活用する」など、いくつかあります。一般論を否定することによって、どんな議論が展開されるのか興味を引いていくのです。 

自分の文章に自分でツッコミを入れる 

あなたの”主張”を正確な形で知っているのはあなただけであり、すべての読者は「それを知らない素人」なのです。文章が自己完結してしまって、読者自身が議論のテーブルに参加できない「正しいだけ」の文章は避けましょう。読者と共にサイドエピソードや昔話などを盛り込み、主張に至るまでの「ムダな回り道」を歩くのです。

しっかりとした”主張”には、反論が出るのが当たり前です。反論に答えることは、読者との有意義な”対話”なのです。「主張→反論→自分の再反論→事実→結論」のように、間に読者の反論を交えることで自分事に変化していきます。

読者がブログを読む3つの理由

  1. 目からウロコの内容を知りたい
  2. 背中を後押ししてほしい
  3. 情報収集

読者が文章を読むときに目からウロコの内容ばかりだと疲れてしまいます。行動に至る力強い内容は全体の3割で十分で、残りはその裏付けや客観的な意見や事実などを添えていきましょう。

編集:編集とはハサミを入れること

文章の編集 、いわゆる推敲と言われる作業は「書き始めの編集」と「書き終えてからの編集」に分かれます。

書き始めの編集では、「何を書くか?」ではなく、「何を書かないか?」を明確にします。頭の中の「ぐるぐる」を可視化するために、書こうとするテーマについてパッと思いつくキーワード10個、そのキーワード群が持つ傾向以外のキーワード10個の両方を紙に書き出してみましょう。その上で、 使うキーワードを選び出すのです。

書き終えてからの編集では「もったいない」を禁句にします。文章を図解に起こし、論理性をチェックします。長い文章を見つけたら、短い文章に切り分けます。例えば、接続助詞の”が”を多用して文をつないでいるならば、そこにハサミを入れるか、別の言葉に言い換えられないか、考えましょう。

そして細部が間違いなく描写できているのかチェック、文章を読んで”映像”が思い浮かぶか確認しましょう。

推敲を行う際は、①文章を別のワープロソフトにコピー&ペーストする②文書のフォントを変更する③縦書き・横書きを変更することで、意識を切り替えましょう。そして1回ではだめで2回は読み返します。最後に、近くに家族や友人など気のおけない”読者”がおりまら。一度読んでもらい率直な感想を聞かせてもらいましょう。相手の「この一文の意味が分からない」に反論することで文章を仕上げていきます。 言葉で反応しなければならないということは、それだけ言葉が足りていないのです。 

良い文章を書くには特別な文才はいりません。書くための基本的な技術を踏まえ、読者に主張を伝えていきましょう。