ここでは個人事業主のみなさまにおすすめする8つの基本的な節税策をお話ししていきます。
1:効果抜群の青色申告
個人事業主の節税は青色申告から始まると言っても過言ではありません。青色申告とは、一定のルールに従って税務署に書類を提出することで様々な節税策を認めてくれるというものです。
青色申告することで認められる節税策4点
青色申告をすることで複式簿記などに対応しなければなりませんがこの4点の節税策が認められることは非常に大きなメリットです。
- 青色申告特別控除が使える(電子申告すれば65万円の利益を控除できる)
- 青色事業専従者給与を経費にできる(これは3番で詳しく説明します)
- 損失の繰越が3年間可能になる
- 特別償却や税額控除など、様々な減税制度を利用することができる
特に開業直後などは経費が先にかかって思わぬ損失が発生してしまうことがあります。これを利益がでた年の収入から引くことができるという損失の繰越効果は非常に有利な制度です。
青色申告を利用する方法
このように非常に有利な点がある青色申告ですが、利用するにはいくつかのルールを守らなければなりません。主なもの4点をこれからご説明します。
- 開業後2ヶ月以内に税務署に申請を出していること
- 複式簿記などを定められた帳簿を作り、正確に取引を記録をしていること
- 帳簿に基づいて青色申告決算書を作成していること
- 帳簿と根拠となった資料を7年間保存しておくこと
青色申告という制度は、正確な帳簿をつけることを税務署に約束することで適用される有利な制度です。故意に事実と違う記録を行うなど、ルール違反をしてしまうと青色申告の承認が取り消されることもあるので気をつけましょう。
2:資産購入は30万円未満に抑えるべし
はじめに固定資産と消耗品の違いを理解しましょう。消耗品とは一年以内など短期間に使い切ってしまうもので購入金額も10万円未満のものを指します。固定資産とは、購入した年だけではなく何年にもわたって使用することができるもの、例えば車や機械、高価なソファーやテーブルなどを指します。支払いは住んでいるのに即座に経費にできないというのは少し歯がゆい感じがしますが、今後これから数年間にわたって効果が現れるものを全てその年の費用にするというのは若干虫が良い感じもします。
ただし実際に支払いが済んでいるのに税金上の経費の金額と一致しないというのは税金が多くかかってくることもあり、どうにか早期にしようかしたいものです。そこで認められているのがこの制度、固定資産の内30万円未満の金額のものは、適切に決算書に記載することで全額費用とすることができるのです。
例えば、299,999円のパソコンを12月31日に購入して使い始めても全額その年の経費にすることができます。30万円のパソコンを12月に購入しても1ヶ月分のわずか6,000円程度しか経費にすることができません。微妙な金額のものを購入する際は気をつけましょう。
3:家族を青色事業専従者にする
個人事業主というものは家計が一緒になっている家族に対してはお給料を支払っても経費にならないというルールがあります。青色事業専従者というのは、このルールの特例で、適切な届出を行うことで事業主と生計を一緒にしているとしても給料を経費として計上することができます。
この適用を受けるための4大ポイントをご説明します。
- 事業主と生計を一にしていること
- その年の12月31日時点で15歳以上であること
- その年を通じて6ヶ月を越えてその仕事に専従していること
- 給与の金額が適正であること
これらのルールにはまれば、家族であっても給料を支給することができます。ポイントとしては、専従していることが大事なので、学生や他に仕事をしている人は対象になりません。また給与の金額が適正であることが大切なので、他人に同じ仕事をやらせた場合にその給与の金額を払うかどうかを考えなければなりません。
ちなみにあまり安い金額の給与設定しても効果は薄くなります。なぜなら、青色事業専従者に登録した場合、その人についての配偶者控除や扶養控除を申請することができなくなります。例えば月に3万円程度しか給料を出さない場合は、年間で36万円です。扶養控除は38万円収入もなかったことにできますので、わざわざこの給料を出す必要がなかったということになります。※給料を支払うと、給与を受け取った人は収入として申請しなければならないので所得税が課せられることがあります。
4:消費税の計算方式は簡易課税制度がおすすめです
年商が1000万円を超えた翌々年からかかり始める消費税、頭の痛い問題です。出費が増えるのはやむを得ないのですが、さらに大変なのが、その計算です。大きく2パターンの計算方法(簡易課税方式・本則課税方式)があるのですが、ここは簡易課税制度を選択しましょう。
本則課税方式とは一つ一つの売上と仕入経費をすべて正しく記帳して計算する方式なのですが、経費の中には軽減税率の食品関係など消費税のかかり方が異なるものがあります。これを一つずつ調べるのはとても手間です。
簡易課税方式は、売上の合計額に掛け目をかけて計算する方式です。もちろんどちらの方が有利かは税理士などに確認するのがよいのですが、手間を考えると多くの事業者で簡易課税方式の方が有利だと思います。自分自身の手取りや社員の人件費の割合が多いことが多い場合は簡易課税方式の方が有利です。
5:減価償却は定率法にしましょう
10万円以上の事業資産を購入した場合、1年間ですべて経費にするのではなく、減価償却を行わなければいけません。この減価償却を行う際の計算法は大きく3パターン、定額法と低率法、30万円未満の即時償却に分かれます。一番有利なのは即時償却の特例を活用することですが、30万円以上の物には対応しませんし、1年間で合計300万円未満までという上限があります。
その他の資産、例えば30万円以上の車両などの償却は定額法と定率法を選べるのですが、定率法の方が早期に費用化できる金額が多くなります。事前に届け出が必要ですが、是非忘れずに定率法を選択するようにしましょう。
6:領収書のない支払いを経費にする方法
電車の切符や自動販売機で物を購入した場合、レシートが残らないことがあります。取引先の方の結婚式やお葬式にお金を包んだ場合も同じく領収書をもらえません。こういった支払は経費にすることはできないのでしょうか?
いえいえ、そんなことはありません。しっかりと費用化する方法はあります。それは、出金時に出金伝票を残し、関連情報も残すという方法です。関連情報とは、移動経路や案内状、相手との状況を資料として残す形で大丈夫です。消費税の計算上、3万円未満のものに限られるのですが、帳簿に必要事項(①取引の相手方の氏名又は名称、②取引年月日、③軽減税率の対象かどうかの取引内容、④税率の異なるごとに区分した取引金額)を記載すれば大丈夫ですし、3万円以上の取引でもやむを得ない事情が分かる状態になっていれば問題になることは少ないです。
7:契約書は原本1枚でも効果は同じで印紙が節約できる
契約書は慣例的に利害関係者全員が原本を保管することが多いですが、実際の契約書の効力は原本1枚でも同じになります。そのため、1枚だけ本物を作成し、その他はコピーで済ませることで印紙代の節約ができます。
ちなみに、領収書だけではなく契約書にも印紙が必要であることを知らない方もいらっしゃるのですが、1万円以上の取引金額が記載された契約書には200円以上(取引金額によって決まる)の印紙を貼ることが必要です。
印紙を貼り忘れたことを税務署から指摘されるとペナルティとして本来の3倍の金額の税金を取られることになります(自己申告すれば1.1倍で済みます)。印紙税の取り扱いで不安がある方は都度税務署か税理士に確認しましょう。
8:代金の受け取りは振り込みにしましょう
これも印紙税の節約についてですが、5万円以上の現金を受け取って領収書を渡すと印紙を貼らないといけません。これを節約するためにも、商品サービスの代金は銀行振り込みで支払ってもらうようにしましょう。領収の確認はPDFをメールで送れば、電子領収書には印紙を貼る必要がありませんので節約ができます。