経営者向け決算書の見方と改善方法
経営者に必要なのは分析ではなく業績改善です。細かな数字の分析は、銀行や税理士がやってくれます。常に経営判断を迫られる経営者は、「○○比率」や「PER」のような用語はひとまず横に置いて、まず大きな傾向をとらえて改善の方向性を決めることが重要です。
そこで今回は、この二つの言葉を軸に、どのように好業績をたたき出していくのかお話をしてみようと思います。
「損益計算書」は「利益への執念」が現れる
「貸借対照表」は「社長の人生観」が現れる
特に貸借対照表がなぜ今のような形になってしまっているのかというところに向き合っていくのは難儀なことですが、私の経験からすると、社長様の幼少期からの人生の御苦労された経験や苦手分野、勝気な姿勢などの御性格に起因する部分が大変多い感覚を持っています。
それでは始めて行きます。
「損益計算書=利益への執念」この改善方法とは?
まずは簡単に、損益計算書の作りをご説明します。
売上 | 顧客に出した請求書の合計額です | 営業部門 |
▲原価 | 出荷のための仕入れや現場の費用です | 製造部門 |
粗利(売上総利益) | 現場での利益が現われます | 営業&製造部門 |
▲販売費&管理費 | 販促活動や本部管理費などが入ります | 本部管理部門 |
営業利益 | 本業の利益が現われます | 営業&製造&本部 |
▲利息など | 銀行に取られる利息や補助金などです | 経理部門 |
経常利益 | 今年の事業の収益が現われます | 社員全体 |
±本業以外の収支 | 土地建物などの売買や過去の訂正など | 経営者 |
税引き前利益 | 税金を計算するための利益です | 社員全体+経営者 |
▲法人税 | 累進課税で21~33%を納めます | |
税引き後利益 | 税金を引いた後の利益です |
損益計算書は売上ー経費=利益の計算を細かく書いたものです
損益計算書をシンプルに言うと、今年なんぼ儲かったのか?を表す表になります。その儲けを出すためにどのくらいの請求書を出していて、費用がどのくらいかかったのかをジャンルごとに分けた計算表です。
一年ごとに計算をスタートするので、毎年リセットされて事業年度ごとに利益水準を競うような経営成績表です。
各部門の責任が○○利益という部分に現れる
上の表で、会社の機能の役割分担が見えてきます。たとえば営業部門は売上と粗利に直接かかわる仕事をしています。もちろん営業活動に販売費やガソリン代などにも費用はかかりますが、最も責任を負うべき部分は売上と粗利です。このように、どの数字を改善するにはどの部門に責任があるのかということをハッキリさせておく必要があります。
信賞必罰の風土を作るには、リーダーに計数を教える、統制していく
そのため、会社の業績を改善させていくには、それぞれの部門リーダーが自分たちの目標をはっきりと知っておく必要があります。社会人が活動した結果の良し悪しは数字によって表されます。目標数字に向かって一直線に進み、目標に直結しない事柄はカットしていくことを社内に徹底させていくのです。
「貸借対照表=社長の人生観」この成功法則とは?
まずは簡単に、損益計算書の作りをご説明します。
資産の部 | 負債の部 | ||
現金や預金 | 買掛金/未払金 | ||
売掛金 | 借入金 | ||
商品在庫 | 資本の部 | ||
土地や建物 | 資本金 | ||
その他の資産 | 前期までの利益 |
貸借対照表は、お金の出どころと使い道を細かく書いたものです
この変わった形をした表は、右半分がお金の出どころを、左半分がお金の使い道を表しています。
お金の出どころを表す右側には負債の部と資本の部というものがあります。負債の部には、相手からお金やモノを前借りしている状態のものがどのくらいあるか書いてあります。資本の部には社長や社員が投資している金額がどのくらいあるか書いてあります。
反対の、お金の使い道である左方には、資産の部というものがあります。お金を銀行口座に置いていたり、商品を在庫したり、車や土地建物を買ったりしています。
※ここでとても大切なポイントなのですが、売掛金と買掛金については、実質的にはお金を貸している/借りているような状態であると考えた方がしっかりとした管理運営ができます。もし請求代金の入金が遅れた時は、銀行返済が遅れた時に銀行がどのような行動を取ってくるのかを真似た行動を取ってください。
社長の趣向やその時々の人生観が見事に現れます
この貸借対照表は、一年リセット方式の損益計算書とは異なり、創業から現在までの会社の歴史が記録されます。例えば本社を建てたようなプラスの歴史も残りますし、運転資金や固定資産を買う時の借入金がどのくらいあるかも分かります。また、売った商品の代金が振り込まれないままになっている売掛金なども履歴が残ります。
車両を揃える傾向が合ったり、損切りが苦手であったり、現金を保険のように取っておきたかったり、借りれるときに大量に借りておきたかったりするなど、経営者のその時々の経営判断や好みが現われてくるものだと思ってみております。
(見ていて感じるのは、お金を儲けるよりも適切に使う方が難しいという言葉は本当だと思うことが多いです)
貸借対照表については改善というよりも、バランス感覚が大切です
先ほど申し上げたように、貸借対照表は過去の経営判断の積み重ねが記録されます。経営判断というものは経営者の感性によって為されるものですから、個別の良し悪しは他人から申し上げることは難しいのですが、あまり偏りすぎないようなバランス感覚は大切にされた方がよろしいかと思っております。
(バランスの傾きが行き過ぎると、他社比較などを行う銀行融資に支障が出たり、経営者を引き継ぐ際などに調整に時間がかかることがあります)
まとめ:損益計算書はリーダーの計数指導、貸借対照表は経営者のバランス感覚を調節する
決算書を大きくとらえる、今回お伝えしたような見方は、あまり銀行や税理士先生はされないかと思います。しかし、現場で臨機応変に経営改善をやる経営者さまや私どものようなコンサルタントは、細かな分析よりもトレンドと言いますか、流れと言いますか。このような大きな視点で現時点の全体像を捉え、前年対比やライバル他社との比較を行いながら改善点をあぶりだしていくことが有効です。
また、先に述べましたように、貸借対照表については社長様の御性格に起因する部分も多いため、その部分を乗り越えていく決意のようなものが大切になってきたりします。
実際の具体的な改善の流れについてはまた別の回にお話ししようと思います。ありがとうございました。