別のブログエビングハウスの忘却曲線でも書いたのですが、人の 記憶というのは1日2日で半分も残らないと言われています。 これから先何十回何百件何千件と取引をしていくにあたりその全てを頭の中に覚えておくことは不可能です。 これはもしあなたが覚えているとしても取引相手が内容を忘れたり、少し違って覚えてしまっていると、言った言わないで余計な余計なトラブルの元になったりします。
ここではそうならないために取引を記録に残していく方法についてご説明していきます。
事業の取引書類を用意しましょう
商売を始めるといろいろな人や会社とたくさんの取引をしていきます丸商品の仕入れをしたり売上たり経費の支払いをしたりそういった外部の人や会社に対してどのような取引をしたかという証拠を残す必要があります。そのために代表的な4つの伝票をご説明していきます。
請求書領収書見積書納品書、この4点は書式としてぜひ最初にご準備されてください。見積書と納品書は事業によってはあまり使わないことがありますが、特に請求書と領収書はほぼ全ての業種で使うかと思います。
①請求書(自分が発行してお金を払ってもらうもの)
請求書とは掛けによる商品の売上代金を請求するために得意先に送る書類です。最初のうちは混乱しがちなのですけれども、自分が相手に請求をする者も請求書と言いますし、自分が相手から物を買ってこれから支払うものに対して受け取った請求書ももちろん請求書といいます。
自分一人だと混乱することはないのですが、将来従業員を雇った時のためにも、これから支払う請求書と売上の請求書は分けたファイルに保存するなど混乱しない仕組みを準備してください。
自社が発行する請求書に書いておいて欲しいものは、 次の7項目です。
- 相手の会社の名前
- 自分の会社の名前住所電話番号など連絡先
- 発行日
- 取引の内容
- 合計金額(できれば消費税の内訳も)
- 振込先などの支払い方法
- 未精算の残高があればその金額
これらを郵送もしくは PDS なのでメールに添付して相手に確実に届けるようにしましょう。取引相手も忙しい方ですし、もしかしたら従業員が振り込みをするかもしれません。 その場合も間違いなく情報が伝達されるようにしっかりとわかりやすい表現で請求書を記載してください。
②請求書(自分が払う方のもの)
こちらは逆に相手に料金を支払わないといけない請求書の取り扱いについてです。相手から請求書を受け取ったら最初にやっていただきたいのが、 支払うべき代金があっているのかどうかの確認です。相手から受け取ったものの個数が合っているか単価があっているのか、これらは取引をした本人しかわからないことです。まず最初に請求金額と明細を見て金額が多すぎないか少なすぎないかを確認してください。
次にこの金額をいつ支払うべきなのか請求書の中に記載があることもありますしもし記載がなければ取引条件を確認して何月何日に支払うとを言うことをメモされてください。
※これもコツなのですが 受け取った請求書について 締め日と支払日の取扱い方針をはっきりと決めていくということは事業をスムーズに運営する大切なルールです。例えばこういったものです。
・前月末までの取引完了分について、翌月の10日までに受け取った請求書は最短でその月の月末に支払う。
・もし10日を過ぎた場合は翌々月末の支払いになる。
・特別の取り扱いをする相手は事前に取引条件確認書を作成しておく。
例えばこういった基本方針を持っておけば、取引相手から早い支払いを求められても自社の基本方針はこうですとはっきりと説明することができますし、自分以外の人が請求書を受け取ったとしても同じような作業をすることが可能になります。
またこの基本方針は業種の慣行や自社の状況によって20日締めや15日締め、翌月末払いではなくて翌々月10日払いなど様々なパターンがあります。資金繰りにも直結する話ですのでなぁなぁにせず、自社の方針として設定されてください。
③領収書
領収書とは、商品やサービスをお届けして代金を現金として受け取ったり、請求書を送って振込などで売上代金を受け取った場合に、「確かに代金を受け取りました」という意味で発行する書類になります。
この領収書の中には相手の会社名金額収めたもの自社の名前住所連絡先など代金を受け取った日にちそして金額によっては収入印紙を貼り付けます 。
この領収書は、 銀行振込の場合は必ずしも発行しないことがあるのですが、現金を受け取った場合は極力その場でお渡しするようにしてください。できればこの時にコクヨの3枚複写の伝票などを使用することをオススメします。冊子に控えが残り、相手には領収書を渡し、入金伝票をファイルに綴じることができるので非常に便利です。
また5万円以上の取引の領収書に貼る収入印紙という切手のようなものがあります。 これは取引によって貼る印紙の種類が変わりますので、 顧問税理士か税務署などに確認するようにされてください。
※収入印紙については、時々領収書を受け取る側が「印紙はいらない」と言われることがあるんですが、 これは相手が決めることではなく法律で貼ることが決まっているものですので、確実に貼るようにしてください。 税務調査などで印紙が貼られていない領収書があると確実に問題になり、追徴されることが多いです。
④見積書
見積書は得意先から今までと違う取引をやってくれと言われた時や初めての取引の際に求められることが多いです。この商品やサービスはこれからこの内容をこの金額でこのように取引させて頂きますという内容を書いたものになります。表現は簡潔にわかりやすく、税込や性別の区別や決済日などの取引条件をはっきりと書くようにしてください。
調整中の部分が残っている場合は決まった部分を明示し、未決定部分は別途見積させて頂きますという文言を入れるなど、後でトラブルが起きないように確実に記載をするようにしてください。また見積書の有効期限も、一週間や月末までなど適切な期間を区切って記載するようにしてください。
⑤納品書
納品書は、商品やサービスを届けた際に受取の確認の書類になります。業種によっては渡さないケースもあるのですが、私のような業種でしたら書類をPDFで送ったメールで残しておくなど、 受取り完了日の確認が確実にできるような工夫は是非されてください。
事業の取引書類の保管方法について
請求書や領収書の保管方法は大きく分けて、紙で保管する方法とパソコンに保管する方法の2種類があります。近年は電子帳簿保存法など、 全てがパソコンやシステムで完結する取引の流れについて書類の確認方法が定められた法律もあります。受け取って何日以内にスキャナーで撮って保存しなければならないなど細かな取り決めはありますが、あくまで基本原則は4点セット(①取引相手、②取引日、③取引内容、④取引金額)がはっきりと記録に残っておくことが大切です。
紙で保管する場合:ファイリングの方法について
受け取った領収書や請求書については確実に一箇所にファイリングするようにしてください。このファイリングの方法は、 日付順に閉じて行くパターンや相手先ごとに綴じて行くパターンがありますが、紙がどこにあるかわからなくならないように出来る限り一箇所にファイリングしていくことが大切です。
個人事業であれば決算の締めは12月31日ですので年度ごとに一つのファイルに閉じていくパターンが基本的に便利だと思います。
パソコンで保存する場合:電子帳簿保存法について
電子帳簿保存法について、要点をまとめます。
これは本来2022年の1月から適用される予定だったのですが、コロナの対応もあってか2024年1月1日から義務化と言う改正がありました。
内容としては、大きく①すべてが電子取引で完結する商売と、②領収書や請求書発行などを使う取引とに分かれて、それぞれについて、その内容の保存方法について、「電磁的記録での保存」「紙データをスキャンして保存」「電子取引データの保存」に分けて細かく規定されています。
取引の内容を確実に全部追えるようにしておくということが基本方針です。例えばスキャナー保存ではスキャンした日付(タイムスタンプ)が70日以内であったり、検索しやすい仕組みを作るなど、私が認定アドバイザーである会計 freee によくまとまっておりますのでこちらのリンクをご参照ください。
書類の保存期間について
事業を開始したばかりだとおそらく紙の書類がほとんどであることが多いかと思います。書類の保管場所が必要になってきますが、税金の計算に使う書類の保存期間は7年間です。 ちなみに7年間経ったから全ての書類を捨てて良いのかといいますとそうでもなく、法律で定められているのが7年間ということです。 取引相手との5年以上10年以上と長く続くこともあります。税務署に求められる以外にも各種許認可や届出に添付することもあります。必要に応じて書類の保管は確実に行なってください。
※例えば所有権を表す書類などは再発行ができないことがあります。少額のレシートなどは所得税法に定められた7年間の保存で十分かと思いますが、重要な書類は後日のトラブルを防ぐためにも丁寧な保管を心がけてください。
便利な作業方法について
これはアナログな手法になるのですが、取引相手が紙ベースの書類を使っていたり、郵送物を送る際など、どうしても紙の書類を扱うことが多くなります。 その際に、屋号や事業所の所在地、電話番号などは何度も書くことになります。こういった事柄はシャチハタネーム印などスタンプを用意しておくと非常に便利かと思います。
また、支払い済みや領収済み処理済みを表すスタンプなどは有ると様々な場面で誤解をなくし、時間を削減し便利ですし、社名などを表す角印を押すことで書類の真実性を表すということは今でも有効な手段です。
まとめ
書類の保管方法については、本業のスピードを上げるためにも効率の良い間違いのない方法を皆様考えて行ってください。情報をコンピューターの中やクラウドに保管することが得意な事業主様もいらっしゃるかと思いますが、自分がいない時や様々なレベルの従業員を雇っていく中で情報共有のためにはまだまだ紙が便利である局面もたくさんあるかと思います。 ビジネスマンは1年間150時間以上も物を探す時間に費やしているなどと言われます。物を探す時間は一円の価値も生み出しません。上手に取引の記録を残していきましょう。